ホトトギス
秋深みゆきます。頬にあたる風を冷たく感じる夕べ、
いつもの路地の家で主人が庭の片隅に矩形の深い
穴を掘っていました。大きな根を張っている椿がゴソッと
切り株になり、庭の奥に咲いている紅薔薇と秋海棠の
花の色だけが際立っていました。
「冬構えですね、御精が出ますね」 「早めに片付けたい
のですがね、なかなか捗りません」
毎日通りかがりに眺めている私。瓦屋根の平屋を囲む
庭の趣きはもうここだけになっています。
路地を曲がった入り口の門脇にタイワンホトトギスが
群れ咲いて、そこだけはなんとも里山みたいな風情です。
斑紋がホトトギスに似ているところからこの名が付いたの
だそうですが、秋になるとバァッと咲いて目をひき付ける
力を持っています。小さな声で花に呼びかけるのです。
「ホトトギスさん! わたし、元気に生きてるよ」
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